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いまや、 大手電機メーカーだったシャープが台湾企業の鴻海の傘下になったり、東芝のテレビ事業部が中国のハイセンスへ売却されるなど、大手企業に勤めていてもいつどういった事が起こるかわからない時代がやってきています。
こういった世間の流れを受け、ひと頃に比べるとベンチャーに就職する若者も増えてきましたが、 大学を卒業して入社する企業としてはやはり大手企業が人気です。
昔から就職するなら大企業とベンチャー企業のどっちがいいのか、というのは話題になりますが、特に就職活動をしている学生や第二新卒といった人にとっては、良く見えてこない部分ではあると思います。
親世代の話を聞くと、やはり安定感のある「親方日の丸」的な大手企業が良いと言われますし、ベンチャーで働いている人から話を聞くと、ベンチャーの自由度を羨ましくも感じます。
そこで、一部上場企業からベンチャーに転職し、その後自分でベンチャー企業を起業をしたり、ベンチャーの役員も経験してきた中で感じる、大手企業に勤めるメリットを述べてみたいと思います。
大手企業の5つのメリット
大手企業に勤めるメリットとして、主に以下の5つが挙げられます。
- 何も仕事をしなくても給料が貰える
- 社会的信用度が高い
- 社員教育にコストをかけている
- 福利厚生が手厚い
- 労働時間や休暇制度がしっかりしている
この5つのメリットについて、個別に見ていきましょう。
何も仕事をしなくても給料が貰える
大手企業に勤める一番のメリットは、この「何も仕事をしなくても給料が貰える」という事です。
大手企業では、新入社員に対して企業自身がお金を払って、研修をしてから現場に配置をする事が大半です。
私が新卒で入社した損害保険会社では、入社して1カ月、富士山の裾野にある自社の研修所にカンズメ状態で研修が行われていましたが、 朝から晩まで研修だけを受けていて、売上を1銭もあげていない新入社員にもきちんと1か月分の給与が支払われました。
また、現場に配属されても、現場の知識がない状態ですので即戦力とはならず、先輩社員の指導の下、営業現場に出ていくという事になりますが、それでもきちんと給与は支払われていました。
一方、会社では次の配置が決まるまで、ほとんど何もせずに社内に待機をしている課長クラスの社員がいたのですが、その人たちの給与を聞くと1,000万円以上貰っているというのがざらでした。
このように、自分の給料分の売上を稼いでいなくても、きちんと給料は貰えるのが大手企業です。
さらに通常の給与に加え、ボーナスや各種手当、昇給、手当なども貰えるだけでなく、同世代のベンチャーにいる社員よりも給与自体が一般的に高くなる傾向にあります。
大手企業は、長年勤める事が前提となっていますので、定年時の退職金制度についても規定がしっかり設けられています。
社会的信用度が高い
大手企業は、一般的にベンチャー企業よりも社会的信用度が高い、というのがあります。
大手企業は長年経営が安定している事が多く、株式市場に上場をしていたりCMを打っているような企業も多いため、自然と知名度も高くなり、知名度の高い企業なら業績も良く将来的にも安心といったイメージを持たれるため、信頼を得られやすい傾向があります。
これにより営業活動をする上においても、企業の認知度が高ければ顧客からの信頼も獲得しやすく、取引先の開拓の面でも優位に働きます。
このことは、社員が家を買ったりする場合の銀行借入などにも影響してきます。
また、転職の際にも大手企業に入る事自体のハードルが高いと考えられがちですので、大手企業の名前がステータスとなって、書類選考などで有利に働く場合があります。
社員教育にコストをかけている
先ほど述べたように、私が新卒で入社した保険会社は、研修所で1カ月間研修で勉強だけをする、という事が行われていました。
そこでは、 名刺の出し方からあいさつ仕方といった社会人としてのマナーに始まり、損害保険会社の社員として必要な保険の知識の習得、営業の仕方、保険の資格を取るための勉強をするだけの生活をさせてもらっていました。
また、新入社員に対する研修をするために、全国で売上上位の一線級社員を何日間か現場から呼び寄せて、社員の指導に充てていました。
一方、ベンチャーで良く言われるのは「即戦力」という言葉。
そのため、多くの時間をかけた社員研修が行われる事は少なく、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)という名の「現場で覚えろ」的な話が多い。
そのため、最初からベンチャー企業に入社してしまうと、きちんとした研修を受ける事はなく、社会人として必要なビジネスマナーを知らないままで来てしまったという方もベンチャー企業にはいます。
福利厚生が手厚い
企業によってばらつきはありますが、大手企業は年金や保険制度の充実だけでなく、社宅の完備または家賃の補助といった福利厚生が整っているところが多い。
さらに、社員食堂や語学力を身に付けるための資格支援を受けられるなど、社員がより快適に働くために考えられたものが用意されています。
一方、ベンチャー企業においては、基本的にそういった福利厚生制度はありません。
最近、 ベンチャー企業においても、他部署の人たちとランチをする事を支援する制度が用意されている 、 違う部署の人と3人以内で飲みに行ったら1人3000円補助される、 業務を改善するアイデアなどを1件提案するごとに500円が支給される、というような福利厚生を設けている企業もあります。
しかし、大手企業の社宅や家賃補助のように「一律対象者向け」の制度というよりは、「特に活動をする人向け」のものが多いのが特徴です。
労働時間や休暇制度が守られている
大手企業では、いまだに労働組合があるところも多く、電通で起こった過労死するような事態を起こさないように、細かいルールを設けて労働時間を適正なレベルに保つ努力をしています。
企業によっては、休暇の取得について積極的に取得ができていないと、上長の評価が下がるといった罰則を設けているところさえあります。
また、産前産後休業・育児休業・介護休業の取得を奨励したり、心身のリフレッシュを図るための休暇を設けている企業もあります。
労働時間がキッチリ守られているため、仕事が終わった後の時間を余暇や学習、副業をするなど、労働時間以外を自分の時間に充てる事ができるのは大きなメリットです。
一方、ベンチャー企業においては裁量労働制という名の下、「24時間365日戦えますか?」という昔のリゲインのコマーシャルのようなペースで働いているケースも多く見受けられます。
大手企業ではビジネスモデルを最適に運用できる人材が求められている
大手企業が、これらのメリットを社員に提供できるのはなぜでしょうか?
これは大手企業は、収益を上げるためのビジネスモデルが確立していて、そのビジネスモデルを維持するための組織構造が完成されており、長年の経営を行ってきたことによるブランド力と相まって、高い収益を上げる事が可能となっているからです。
大手企業ではこの組織構造を維持、存続させるための業務が多岐にわたって用意されており、社員はその歯車となって動く事が重要で、歯車が少しぐらい抜けても全体としてはビジネスモデルが回って収益を上げ続けます。
この組織構造が優秀なのは、どの業務を誰がやっても大丈夫なように細分化されており、そのための人員が配置されている、という事です。
そのため、社員に対してはこのビジネスモデルを破壊するのではなく、ビジネスモデルをそのまま運用する事が求められ、既存のビジネスモデルを最適化する事が評価されます。
このビジネスモデルや組織構造の一部だけを変えようとすると、長年固定化している事による不具合が出たり、社会構造が変わってビジネスモデルがそぐわなくなってきても、なかなか方針変更ができないという事が起こります。
また、組織構造が完成されているが故に組織が硬直化して、組織間調整のためだけに打ち合わせをするといった、仕事のための仕事が存在したりします。
さらに、企業内ではビジネスモデルを維持するための行動こそが称賛される方向になるため、年功序列が評価される事が当然となり、実力本位での評価を行う事が難しいものがあります。
ただし、このビジネスモデルや組織構造が現在の社会情勢にそぐわなくなってきて、リストラする大手企業が増えてきているのは皮肉な事です。
大手企業に行くべきか、ベンチャーに行くべきか?
大手企業のメリットを見てきましたが、上で書いたようなデメリットも存在しますし、大手企業であってもいつビジネスモデルが変わって、会社自体がなくなる事態になるかはわかりません。
しかし、ベンチャー企業のほうが大手企業のようなメリットがない分、個人の裁量が大きく、大きな仕事ができると言うのは新卒や第二新卒で入社した若者を騙す大きな嘘が含まれています。
確かにベンチャー企業のほうが個人の裁量が大きいかもしれませんが、それは逆に言うとなんでも自分でやらないといけません。
大手企業では複数の人員や派遣の人がやるような雑務でも、全て自分でやらなければなりませんので、自然と労働時間は長くなります。
また、大手企業では動かせるお金が圧倒的に異なってきます。
大手企業では、部署で数千万から数億、時には数十億といった予算を使って事業を行っていますが、ベンチャー企業だと資金力に余裕がないところが多いため、あまりコストが掛けられず、社員の人力に頼る事も多い。
さらに、大手企業には過去から積み上げてきた豊富な取引ネットワークがあり、また取引先も大手企業が多くなるため、そこで展開する事業も自然と大掛かりなものや、長期に渡る事業に取り組めます。
最近では大手企業も自社で取り組む新規事業だけでなく、オープンイノベーションという形で、社内リソース活用したベンチャー企業との協業なども行っており、ベンチャー企業に行かなくても社内起業ができたりもします。
ベンチャー企業は、社内制度や組織構造、最適な業務フローなどが確立しておらず、人依存のところが多いため、大手企業が得意とする組織構造で収益を上げるという事については、大手企業の方が学べる事は多く存在するのです。
ちなみに、最初に大手企業に入ってからベンチャー企業行くのは簡単ですが、ベンチャー企業から大手企業に行く事はかなりハードルが高いのが現実です。
そのため、自分がやりたい仕事内容が新しくてベンチャー企業以外に選択肢がない、自分で新卒ですぐに起業するという事がない限り、新卒では大手企業に就職する事を後輩達から相談を受けた場合に勧めています。
もちろん、それでもベンチャー企業に飛び込むんだ、という若者に対してベンチャー企業はウエルカムではありますが、その場合でも大手企業で研修などを受け、色々と吸収してからベンチャー企業に入ってもらう方が、ベンチャー企業にとっても嬉しいのです。
大手企業か、ベンチャー企業か迷っているのであれば、是非参考にしてみてください。
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